5月の経済研究所セミナー

日時:2011年5月31日(火) 16:30~18:00
会場:中京大学名古屋キャンパス14号館4階・経済学部会議室
講師:Leonard F.S.Wang氏  国立高雄大学教授(台湾)
論題:Environmental Policies, Consumers Awareness, and Privatization in a Differentiated Oligopoly with Free Entry(coauthors Chu-chuan Hsu and Jen-Yao Lee)

セミナー概要:

国立高雄大学(台湾)のLeonard Wang 教授をお招きして、公企業と私企業が共存・競争する市場(混合寡占市場)における環境税と公企業の民営化政策との関係性に関する研究を報告していただいた。彼を含め多くの研究者が混合寡占市場における環境政策の効果および民営化の効果について取り組んでおり一定の成果があがっている。そうした既存研究と比し、今回報告していただいた研究は、環境汚染がもたらす社会的損失に加えて消費者が環境被害に対して持つ嫌悪感を考慮したという点に新機軸があるといえる。この嫌悪感の存在を前提に、Wang 教授は、(i) 企業の参入規制があるとき民営化前後の環境税率と実現する社会厚生はどうなるか、(ii) 企業の自由参入を許したらどう結論は変わるかの2つを検討している。興味深いことに、(i) のケースでは民営化前後で環境税率も社会厚生も変化しないという、混合寡占理論で言うところの『民営化中立命題』が成立することが示される。一方、自由参入化では民営化中立命題は成立せず、民営化は必ず厚生を悪化させるという事が示されている。以上の結果は、消費者視点たる環境汚染に対する嫌悪感には無関係に成立する。つまり、混合寡占市場における環境・民営化政策の在り方は消費者サイドの効果よりも企業サイドの効果が色濃く反映されることを明らかになったと言えよう。