3月の経済研究所セミナー

日時:2013年3月5日(火)16時30分~18時00分
場所:中京大学名古屋キャンパス・経済学部会議室(14号館4階)
講師:大森達也 氏 (三重中京大学現代法経学部教授)
論題:Public health expenditure, social security, and fertility

近年、公的医療支出の充実により寿命が伸びることを通じて、65歳以上の高齢者人口が増大している。寿命が伸びると、老後の生活のための蓄えが必要となり、子育てのための費用が負担できなくなる。近年の少子高齢化はこのような理由から発生しているのではないか。本報告では、公的支出の内容の変化が高齢者人口の増大を通じて出生率の低下を発生させていることを検証するために、公的医療支出と年金等の公的社会保障給付の2種類の公的支出の配分比率の変化が出生率に与える効果を経済モデルを使って検証している。

本報告の結論は、以下の2点である。まず、社会保障給付を削減して公的医療支出を増やすことによって、出生率が低下するケースがあることが示された。次に、公的医療支出の相対的な増加によって出生率が低下するが、社会的にはそれが望ましくなることがあることが示された。出生率の低下は、解消しなくてはならない問題として常に指摘されているが、実は出生率低下は必ずしも問題ではないことが分かる。

本報告は、公的支出が長寿化を通じて少子化を引き起こしていることを指摘しているが、長寿化が少子化を発生させていることを指摘している研究は少なく、この点から本報告の意義は大きい。さらに、少子高齢化は必ずしも問題ではないということを指摘した刺激的な内容であったために、学外からの参加者を含めたセミナー参加者と活発な議論が行われた。
(経済学部准教授 古川章好)