9月の経済研究所セミナー

要旨:
本報告は、地域内企業の生産性を高めるタイプの公共投資を以て、移動可能な資本を奪い合う地域政府間競争に着目し、 さらに間接民主主義制度を政治過程として明示的に導入することにより、 どのような特徴を持つ市民がそれぞれの地域内において政策決定者として選出されるかについて検証しようとしたものである. 対称地域間の公共投資競争下では、両地域内において中位よりも大きな資本賦存量を有する、 いわゆる「お金持ち」な市民が選出される、という結論が得られるが、これは政策変数を資本課税率として、 同様のフレームワークで研究し、中位よりも小さな資本賦存量を有する「貧乏」な市民が選出されるという先行研究の結果とは逆のものである。 また、この逆転の主たる要因として、政策変数を資本課税率から公共投資量に変更することにより、 地域政府間競争の性質が戦略的補完から戦略的代替へと変わることが指摘された。 精緻な理論分析から興味深い結果を導いた報告であり,参加者との間で多くの議論が行われた.
(経済研究所長 釜田公良)