11月の経済研究所セミナー

要旨:
国際経済学およびマクロ経済動学の理論分析において,世界的な権威であるカナ ダ・モントリオールにある名門マギル大学のゴ・ヴァン・ロング先生を,ふたた び経済研究所のセミナー講師としてお招きできたことは,大変光栄なことである。 今回先生が報告された「グリーン・パラドクス」とは,どこか1つの国が環境保 全や資源保護のために規制政策を導入すると,かえって世界全体の環境が悪化し たり,資源が枯渇したりする現象を指す。代表的な具体例として,一国が二酸化 炭素排出規制をすると,他国に汚染排出産業が移転するなどして,結局期待した ように環境が改善されない「カーボン・リーケージ」問題が広く知られている。 今回の報告は,あわよくばフリー・ライダーになろうとする潜在的な動機が存在 しうることや,効率的な国際間環境条約を締結することがいかに困難かなどを中 心に,この分野に関連する膨大な数の研究を丹念にサーヴェイするとともに,将 来に残された研究課題を紹介するものであった。 会場が満席になるほどの盛況で,参加者は一様にロング先生の博識に驚嘆させら れた。
(経済学部教授 近藤健児)